慶應義塾 創立150周年記念 未来をひらく 福澤諭吉展(福沢諭吉展)

福沢展 余録
企画の現場から

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3つの井戸茶碗

Photo 茶道の舶載品茶碗の中で、殊更茶人たちに愛好されてきたのが、井戸茶碗といえましょう。
井戸茶碗は15~16世紀に朝鮮半島で焼かれた茶碗で、褐色系のざっくりとした土味(つちあじ)の器胎に薄く釉薬がかかることで、青味を帯びた琵琶色や明るい琵琶色に発色します。かけられた釉薬が高台の付根から畳付にかけて溜まり、それが焼成段階で焼け縮れてできるのが、「かいらぎ」です。
「かいらぎ」とは、本来、刀の柄に巻いてある鮫やエイの皮の突起部分を指す言葉で、釉薬の縮れてブツブツした様子がこれに似ていることからこの名称がついたと言われています。
また、発色も均一というわけではなく、部分によって光の当たり具合で色味が変化するところも見ていて楽しめます。

本展には、3つの井戸茶碗が出陳されております。福沢門下生が愛蔵していた井戸茶碗が3つそろったのも150年記念ならではなのでしょう。

松永安左エ門旧蔵の「有楽」(東京国立博物館所蔵)は大井戸茶碗の名にふさわしい深みのある穏やかな作行きです。
「有楽」の銘は、織田信長の弟で、茶人大名としても有名な織田有楽に由来しています。
自分で展示しておきながら何ですが、茶碗の腰から高台のあたりに照明を位置決めしたさいに、立ち上がりの姿の姿の美しさと「かいらぎ」の不思議さに今更ながら驚きを感じ大阪まで巡回させて頂いて良かったというよう思いが込み上げて参りました。

高橋箒庵旧蔵の「常盤」(MOA美術館所蔵)は、小井戸茶碗に属するやや小ぶりの茶碗ですが、腰が水平に張り出し、口縁部に向かってきりりと広がっていく様は風格を感じさせます。明治の元勲、井上馨から箒庵に伝来したという近代コレクターの大所を渡ってきたつわものといえましょう。

最後のひとつが、山口吉郎兵衛旧蔵の「蓬莱」です。前の2作品が少々焼きしまった感じがするのに対し、こちらはざっくりとした感じの土味が強く出ております。
小柄な茶碗ではありますが全体にしっとりとした艶が添っていて味わいがあります。
近年まで濃い茶を服するために幾度も使用されていたというお話が伝わっております。
独特な艶やかさがあるのはそのためでしょうか。
世間にお目見えする機会の少ない茶碗なのぜひともご覧いただきたい逸品です。

3碗の旧蔵者は皆、実業界で活躍したばかりでなく茶道を通じて文化に深く寄与した人たちです。
美術品は、展示構成の一番最後にあります。会場ではコレクターたちの顔写真と略歴がパネルで紹介されております。
福澤との関わりを実感しながら作品を見て頂けるようになっております。

以上

写真は「井戸茶碗 銘 常盤」(MOA美術館蔵)朝鮮時代 16世紀

2009/08/26 23:55:00
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